冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
*    *    *


朝の光は希望と祝福の象徴のように思っていたけれど。
今朝に限っていえば、それは帳をはぎ取り罪状を裁きの場に引き出す審判員のようにさえ感じられた。

光が、まぶしすぎる。

「ーーー訓練された番犬に噛まれたのです。幸い神経や主要な血管は外れています。処置も早かったですし、この邸の犬ですから狂犬病の恐れもありません。が、傷は残るでしょう」
リュカは人差し指で眼鏡のブリッジを押し上げる。


二階の一室だ。
クラウスがソファにかけ、そのかたわらにフロイラがひざまづいている。
リュカは正面から外した位置に立ち、あくまで感情を排した口調で怪我の状態を口にする。

クラウスのシャツの左腕はまくられ、そこには真新しい包帯が厚く巻かれている。
とはいえ血色はよく、怪我の影響は感じさせない。
隣のフロイラのほうが、よほど病人のような顔色をしている。
ほとんど、いや全く寝ていないのだろう。悄然としている。
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