冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「ーーー軽率な行動で主の身まで危険にさらし、結果として怪我を負わせた。
あなたはこの責任をどうとるおつもりですか?」
冬の早朝、石畳に撒かれた水のごとく、ぴしりと冷たく張りつめた声だ。

「・・・お詫びの言葉もございません」
消え入りそうな声が、うなだれるフロイラのくちびるからもれる。

「初日からこんな調子では、先が思いやられます」

まだこの邸に来て、丸一日たっていないのだ。そう思うと気が遠くなりそうだった。


「・・・まあいい」
クラウスの言葉がリュカを制した。

「過ぎたことをとやかく言っても始まらん。利き腕じゃないから、生活に支障はない。だいたい女じゃあるまいし、傷などどうでもいいことだ」

「クラウス様がそうおっしゃるなら、私はこれ以上なにも申しますまい」

ところで、と事務的な口調に切り替えて言葉をつづける。
「犬の処分はどういたしましょうか?
誤って、とはいえ主人に噛み付いたわけですから、殺しますか?」

「そうだな・・・」
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