冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「ーーーずいぶんとご寛大なことで」

「あまり責めて、首でも吊られたら困るからな。こうなった遠因が俺にないわけじゃない」
ちらりと左腕に目をやる。

「憎しみは無関心に勝るという理論からみれば、今のところ大成功かと。もはやフロイラ嬢の頭のなかはクラウス様のことでいっぱいでしょうから」

「優しい男など演じる気はない」

「無理があるかと」

俺には俺のやり方がある、と誰ともなくつぶやく。
「お前はいつも以上に辛辣だったな。憎まれ役を買って出たのか?」

いえ、と直立不動の姿勢をくずさずにリュカは言う。
「私は心底腹立たしさを覚えています。あの方の軽率な振る舞いに。私の主人の身を危険にさらしたことに」

「忠義なことだな」
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