冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
そういえば、とリュカが話題を変える。

「弁護士からの報告です。ラインハート家の財務状況について」

「ふむ」

「ラインハート伯爵は好人物だったようですが、現実という荒波に立ち向かうには人が良すぎたようです」

「没落貴族にありがちだな」

「病気の奥方の治療のために、なけなしの家産を傾けてしまわれましたし。
まだご自分が亡くなると思っておられなかったのか。正式な遺言もしたためていなかったものですから、残されたご令嬢は災難でした」

弁護士の報告によると、ラインハート伯爵が親戚に借金をしていた事実はないという。
親戚の手に渡り質流れになったラインハート家の家財を調べさせたところ、さすがは伯爵家というべきか、絵画や家具など中にはかなり価値のある品もあった。

「すべてしかるべく売れば、抵当に入れていた家は失っても、令嬢の手元にはいくばくかのものは残ったでしょうが」

「強欲な親戚には苦労させられると相場が決まってる」
クラウスが軽く嘆息する。
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