冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
リュカはその言葉には従わず、すっと足を前にすべらせた。クラウスのかたわらにひざまづく。

「クラウス様、足をお見せください」

「・・・・」

そっと右足のトラウザーズの裾を持ち上げる。

「腫れていますね。捻ったのでしょう? おそらくは二階のバルコニーから飛び降りて」
あの方を助けるために、と言葉をつづける。
そうでもしなければ、二階から裏庭まであんなに早く駆けつけられるはずがない。

「気づかれないと思ったのにな」
拗ねたようにくちびるを曲げる。

「右足をかばうから、左側にいつもより力が入っていました」

「なんでもお見通しだな」

「湿布を用意しています。こちらの手当ては私がいたしましょう」

「・・・任せる」
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