お見合い相手は冷血上司!?
 ゆっくりと歩み寄ると、彼は警戒するように顔を顰めた。

 やはり、様子がおかしい。
 営業は身体が資本だ、と口を酸っぱくして言っている彼が、面倒や気分が理由で食事を疎かにしたりはしないはずだ。

「課長もしかして、体調でも悪いんですか?」

「――悪くない」

 切り捨てるように即答しているけれど、よく見るとその額には汗が滲んでいて、息も荒いような気がする。
 そう考えるとこちらを見ない目も、どこか虚ろに見えてきた。

「失礼します!」

 片腕を掴み、バランスを崩した彼の額に手を当てる。「おい!」と逃れようとする彼だが、すでに隠しようのない熱が私の手のひらに伝わった。

「課長、やっぱり熱があるじゃないですか……」

 まだ手のひらに残る熱は、想像以上に熱い。

「だから食欲もないんですね?」

 これだけ熱いと、自覚がないわけもないはずだ。
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