お見合い相手は冷血上司!?
「失礼します」
『第2会議室』とプレートの付いた部屋の扉をノックすると、中から「はい」と抑揚のない声が返ってくる。
「お加減はいかがですか?」
定時を二時間回っても会議室から出てくる様子のない課長に痺れを切らせた私は、意を決して直接乗り込むことにした。
「大丈夫だ。用がそれだけならお前ももう帰れ」
課長は資料とパソコンのディスプレイを交互に見つめていて、こちらを見ることはない。
キーボードを打つ手は止まる気配がなくて、その額には昼間より汗が滲んでいた。
あの様子だと、熱は上がっていそうだ。
「課長、今日はもう帰りましょう」
「明日は休みだ。今日無理するには理由がある」
とことん強情な人だ。
会議室で死ぬつもりなんだろうか。
「……分かりました。じゃあ課長が終わるまで、私も手伝います」
「おい聞いてなかったのか? お前も早く帰れ」
「――イヤです」
即答すると、課長ははぁーっと乱暴にため息をついた。