お見合い相手は冷血上司!?
「十五秒、三十秒、紙一枚、時には音声のみ。限られた中でより人の目を惹き、それを元に人々が商品を手にする。たった一瞬の中に数え切れないほどの世界があって、夢がある。
 ――俺も、幼い時からこの仕事に就くのが夢だった」

 優しい笑みを浮べる彼は、段ボールの中から一枚の紙を取り出す。
 差し出されたそれを手に取ると、課長と一緒に出張へ行った北海道で撮影されたダズリン・アントワネットの新しいパンフレットだった。

 あの時は緑だったラベンダー畑が、そこでは真っ紫の絨毯になって広がっている。
 その中には女性が背を向けて座っていて、振り向いている顔にはラベンダーと同じ紫のアイシャドーが施されていた。

 今までのブランドのコンセプトを一新した魅惑的な雰囲気がとても気に入ったと、課長が提案したA案がそのまま採用されることになった。

 パンフレットに視線を落とすと、あの日見た景色を鮮明に思い出してしまう。
 思わずギュッと唇を噛み締めると、彼は再び私を自身の胸に抱き寄せた。
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