お見合い相手は冷血上司!?
「落ちるぞ」

 背後から抱き締めるようにやって来た彼は、窓の外を眺めて笑みを零す。

「落ちませんよ」

 景色に視線を落としたまま呟くと、彼は私の髪をするりと掬った。

「そんなに気に入ったのか?」

「はい。とっても」 

 クスッと笑う彼は、私から離れていく。
 すぐに衣類の擦れるような音がして、私の胸はドキッと跳ねた。

「おい抱き枕、こっちに来い」

 からかうような声がして、私は恐る恐る振り返ると、彼はシャツ姿で両手を広げている。
 ほっと胸を撫で下ろすと、途端にジッと私を待っている課長が限りなく愛おしく見えた。

「何を笑ってる。早く来い」

 その胸に飛び込むと、彼は、全ての隙間さえ埋め尽くしてしまいそうなほど強く抱きしめてくれる。
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