お見合い相手は冷血上司!?
 風に舞い、視界を塞ぐ髪を耳に掛けると、広がる景色に言葉を失う。

 これ……全部、バラ?

 虹のように重なり合う、数え切れないほどのたくさんのバラ。それは見渡す限り続いていて、先が見えない。
 じわりと温かくなる胸には、すぐに緩やかな感動が吹き上げた。

「綺麗……」

 ゆっくりと近付くと、先ほどよりも濃厚な花の香りが私を包み込む。
 赤、黄、ピンク、オレンジ、目移りするほどたくさんの花が咲く中、ある花の前で私の足はピタリと止まった。

 一枝にひときわ多くの花を付けた、純白色のバラ。

 数の多さは目を惹くものがあるというのに、細い首で少しうつむき加減に咲く花は、自信がなさそうに見えて不思議だ。
 大丈夫だよ、と思わずその美しさを語りかけたくなってしまう。
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