お見合い相手は冷血上司!?
「――アイスバーグ」

 突然耳元で囁かれた声に、驚いて跳ね上がった。知らぬ間に背後にいた課長は、私ではなく、すらりと立った姿のまま目の前の花を見つめている。

 アイスバーグ? って、なに?

「その花の名前だ」

 まるで心を読まれたようで、目を見開いて彼を見つめた。するとこちらを向いた彼は、呆れたように鼻で息をつく。

 また、見果て下げられてしまった……。
 しかしこのバラ、アイスバーグっていうんだ。『氷山』なんて、まるで課長みたい。

 思わず零れ落ちそうになる笑みを必死に誤魔化した。

「課長、バラに詳しいんですね」

「父と母が好きで、小さい頃無理矢理覚えさせられた。興味は……さほどない」

 不機嫌そうに言い放った彼は、こちらへ視線を流す。一瞬視線が絡み合うと、それは大袈裟に逸らされた。
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