お見合い相手は冷血上司!?
「は、離して下さい!!」

 腕の中で必死に暴れてみるけれど、彼は力を込めるどころか、顔色一つさえ変えていない。

 信じられない! 木津主任には踊っただけでセクハラだとか言ってたくせに、いきなり……するなんて!
 く、口に出すのも恥ずかしい!!

 すると彼は小首を傾げて、平然と口を開いた。



「鈴原、俺の嫁になれ」

 言葉の端々からさえも緊張の姿など見えない平坦な声がして、暴れていた腕が、ポトリと太ももの上に落ちた。

 …………はい?

 きっと今、目玉が落ちてしまいそうなほど目をひん剥いていると思う。
 全身の血が流れを止めたかのように、一瞬で身体が冷たくなった。
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