お見合い相手は冷血上司!?
「私と課長は、その、そういう関係じゃないじゃないですか! それをいきなりよ、嫁になれなんて。それに……何がどうなってそんな!!」

 あ、もしや課長……お見合いの失敗続きで、ヤケを起こして!?

 思いを巡らせていると、それは彼の盛大なため息にかき消された。

「お前というやつは。頭が悪いのか?」

 その『頭が悪い』という相手にプロポーズしているなんて、課長も相当変な人だと思うけれど。

 せっかく空けた人一人分ほどの距離はいつの間にか詰められていて、再び目の前に現れた顔は、改めて近くで見ると芸術作品の彫刻のように端正で、思わず胸がドキッと高鳴る。

 刻まれた黒瀬川を見つめていると、彼はため息混じりに口を開いた。


「――そんなもの、お前が好きだからに決まってだろう。バカが」

 まるで悪口のように冷ややかに言い放った彼の顔には、オフィスで想像していたような甘さなんて微塵もない。
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