お見合い相手は冷血上司!?
「勝手にしろ」

「へっ?」

 間違いなく強敵だと思っていた課長があまりにも物分りがよくて、拍子抜けしてしまった。

 しかし、ほっと胸を撫で下ろすひまもなく、彼の鋭く光る視線が私を捉える。とてつもなく嫌な予感がして後ずさると、彼はこちらに視線を流し、小馬鹿にしたようにフッと小さく鼻で笑った。

「勝手にしろ。逃がすつもりは毛頭ない。俺は、お前と結婚すると決めたんだ」

 彼はまるで業務連絡でもしているかのように、淡々と話し出した。
 ざわめいていた木々の音がピタリと止んで、私の頭は処理しきれない出来事に混乱し始める。

「決めたって、何勝手なことを言ってるんですか!」

「これは見合いだ。結婚する意志もないのに、来るやつが悪い」

 やはり強敵課長だ。見事に核心に迫られて、グッと喉を詰まらせる。そう言われてしまうと、罪悪感からぐうの音も出ない。
< 49 / 195 >

この作品をシェア

pagetop