お見合い相手は冷血上司!?
「よし、始めるぞ」

 席について課長を待っていたみんなは、その低い声に背筋をピンと伸ばす。
 長方形の机を囲むように配置された椅子は、一番前の一つだけ置かれた椅子に彼が腰掛け、全てが埋まった。

「資料は、みんな揃ってるな」

 彼の背後に掛けられたプロジェクターのスクリーンに映る影が彼に影を落としていて、ここではより威圧的に見える。

「今日はこの『ダズリン・アントワネット』の新商品コスメのプロモーションだ。中でもこのマリーシリーズは、ここ数年二十代を中心に爆発的に人気がある商品だ。まずは、企画部の作った資料から」

 資料を片手に淡々と説明していく課長。
 今更ながら、二日前の出来事が夢なんじゃないかと思えてきた。
 あの課長が、私を好きなんて……。

「あ、亜子!」

 隣に座っていた桃に肘で小突かれて、ハッと意識を覚醒させる。
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