お見合い相手は冷血上司!?
「課長! お待たせしました」

 店の前で立っていた彼は、他の観光客に紛れていても、その姿勢の良さですぐに目に付く。

「気に入るものがあったか」

 抱えていた茶色の紙袋に視線を落とした課長。しかし彼の手にも、私よりワンサイズ小さい紙袋が握られている。

 結局、何か買ったんだ。

 選んでいた時の姿を思い返し、吹き出してしまう。彼は、それを訝しげな表情で見つめていた。

「課長も、何か気に入るものがあったんですね」

「これは、お前のだ」

 当然のように言い放つ課長は、その紙袋を差し出す。
 驚いてきょとんとする私を見つめた彼は、放心する私の手を取り、それを乗せた。

「あ、ありがとうございます……」

 ようやく手の上の紙袋に視線を落とすと、彼は淡々とした声で「あぁ」と呟く。

 私に選んでくれていたなんて。
 再びその姿を思い返しては、頬から耳の先にまでじわりと熱が上った。

「開けるのは、ホテルに帰ってからにしろ。今は仕事中だ」

 一瞬、微笑みを浮かべた彼は、背を向け、さっさと歩き出す。
 ……先を越されてしまった。
 抱える紙袋と手の中の紙袋を交互に見つめ、込み上げる笑みを押し込めながらその背中を追いかけた。
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