お見合い相手は冷血上司!?


 ホテルにチェックインをして着替えを済ませると、ようやくほっと息をつく。

 視察が目的だったので、早くも今日の仕事は終わってしまった。ふと時計を見ると、時刻はまだ二時を回ったところ。

 お昼、食べ損ねてしまった。どうしよう。
 それまで何ともなかったお腹が、突然唸るような声を上げた。

 すると窓に、ピタ、ピタ、と雨粒が当たる音が響く。
 カーテンを開けると、景色は先ほどまでとは一変、灰色の雨雲が空を覆い、遠くの方では雷鳴が今にも激しい声を上げそうだ。

 外には、出られそうにないな。

 小さく息をつき、サイドテーブルに置いた紙袋を手に、ベッドへと腰掛けた。
 金のシールを丁寧に剥がし、そっと中を覗く。

「あっ……可愛い」

 中に入っていたのは、ラベンダー色をしたバスカプセルだった。
 ゴルフボールほどの大きさのカプセルが、十個透明のケースの中に並んでいる。
 安息が来た、なんて、思わず口元が綻んだ。
 
< 95 / 195 >

この作品をシェア

pagetop