お見合い相手は冷血上司!?
「大したものじゃないが」

「嬉しかったです。使う前からいい香りがしていて。帰ったら使わせていただきます。あ、ちょっと待っててください!」

 部屋に戻り自分が買った紙袋から、ラッピングしてもらったブレンドポプリを一つ取り出す。

「あの、囁かですが、……この間のお礼です。本当にありがとうございました」

 頭を下げながら、それを両手で差し出した。

 するとしばらくして、重さを失った手のひらが宙に浮き、ガサッと袋の音が聞こえる。
 安堵感から勢い良く顔を上げるけれど、手の中の薄紫の袋を見つめる彼の表情は、まるで凍ってしまったかのように動かない。

「中身は……ポプリというもので、香りのあるお花を瓶詰めにしたものです。とても綺麗だったので。でも、すみません。今思うと荷物になるし、課長はあまりお好きじゃないですよね……」

 私の好みで選んでしまったけれど、もっと課長の好きそうなものにすればよかったかもしれない、と肩を落とした。
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