お見合い相手は冷血上司!?
「開けていいか?」

 抑揚のない声が降ってきて、私が何度も首を縦に振り頷くと、彼は綺麗な手つきでリボンを解いていく。
 取り出した瓶を顔の前で見つめる彼は、雪解けたように、眼差しを柔らかくした。

「……綺麗だな」

 瓶に視線を置いたまま、彼の唇は緩やかに弧を描く。
 その姿を見て硬直していた筋肉は途端に緩んだけれど、次第に見ていられなくなって、私は子供のように顔を背けた。

「ありがとうな、鈴原」

 壁を見つめていた私は、いつもより少し甘い声に肩を跳ねさせる。
 ドキッと高鳴る胸がくすぐったくて、落ち着かなかった。

「こちらこそ、ありがとうございました」

 柔らかな表情のまま、「あぁ」と呟いた課長は、少し照れ臭そうに睫毛を伏せる。

「何か食べに行くか。この天気だから、ホテル内だがな」

 白い肌に落ちる影が瞬きの度に揺れるのを見て、私まで気恥ずかしくなった。
< 99 / 195 >

この作品をシェア

pagetop