私たちの、歪な関係



ーーー


「わぁっ!」


「すごいなぁ」

見渡す限り青、魚、青、魚。

小さい魚から大きい魚までたくさんの水槽。

「あ、みて。
この魚映画にでてた」

「あ、ほんとだ」

カクレクマノミ。

小さくてかわいい。

「あ、あっちはクラゲだよ!」

「優衣、慌てなくても魚は逃げないよ」

「だって、本当に久しぶりで嬉しいんだもん!」

隼と繋がれた手を引っ張りながら歩く。

クラゲ…!!

私クラゲって好き。

すごく綺麗だし、なんだか全部忘れられる。

悩みとか、不安とか全部全部。

今この瞬間だけを考えられる。

「綺麗だなぁ……」


ゆらゆら水の流れに忠実なクラゲを眺める。


「優衣はなんだかクラゲみたい」


すると隣にいた隼が口を開く。


「え?私が?」


クラゲなんて。


「うん。ゆらゆらゆらゆら、ふわーって……
すり抜けてどっかに行っちゃいそう………」


隼がクラゲを見上げながら言うのを私は隣で眺めた。


「……どこにも行かないよ」



そして隼の手をきゅっと強く握り直してクラゲを眺めた。


私は隼から離れないよ。









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