僕と家族と逃げ込み家
「お前、人を指で差しちゃいけないって先生に教わらなかったか!」

ムッとその指を握り下におろす。

「だからぁ、春太の高校が志望校なの!」

逆ギレ? やけくそ気味に白状する。

「はぁぁぁ?」

思わず驚嘆の声を上げる。
濱永高校は県下でも有名な進学高だぞ。何と惚けたことを言う奴だ。

長嘆息を一つ付き、恵の肩をポンポンと叩く。

「それ、無理。諦めろ。いくら僕でもお前を濱永に合格させる力はない」
「ほら、やっぱり反対した!」

当たり前だろ。こいつとち狂っちゃったのか?

「どうして! 精一杯やったら夢は叶うって……いつもパパが言ってるもん」

なら、どうしてもっと早くやる気を出さなかったんだ……と口には出さないが心で思う。なぜなら、恵の瞳が潤み始めたからだ。泣かれると厄介だ。

「可哀想だが、それが現実だ。もう少しレベルを下げて合格圏内で考えろ」

平和な妥協案を提案する。

「やだ! 濱永高校以外行かない!」

何て頑固な奴なんだ。

「あのねぇ、『行かない』じゃなく『行けない』のだよ、恵君」

日本語は正確に! だ。

「だから行けるようにしてよ!」

本格的にキレ始める。

やっぱりメザシだ! 叔父にメザシのフルコース料理を頼もう。そして、頭から尾っぽまで食べさせよう。
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