僕と家族と逃げ込み家
「源さんだって、もっと早く素直になって本音でぶつかれば良かったのに……」

母が残念そうに言うと、喜子さんも「そうね」と同意する。

「源さんもだけど、明穂ちゃんも亮君も、突然の訃報だったから心残りがいっぱいだったでしょうね」

素直に……か。

「素直になれず後悔して、自分は不幸だと世をはかなんでみたり……」

トヨ子ちゃんが溜息交じりに言う。

「それって全部、自分が蒔いた種ですね」

過去の経験を言っているのか?

「あっ、それ分かるぅ!」

「先生に分かってもらえて光栄です。私、この前はどうしてか分かりませんが、守さんに素直になれまして……だから、今、幸せなんだと思います」

「トヨ子ちゃん、それ惚気てるのぉ?」
「ヒューヒュー、暑い暑い!」

喜子さんと母が大いに茶化す。

「違いますって、だから、素直になった方が、自分の身の為だと言いたかったんです!」

ギャイギャイ騒がしい声を聞きながら、平和な人たちだと涙を拭う。

賑やかな三人を背に、僕はまた自室に戻る。そして、ゴロリとベッドに横になると、亮の素直な気持ちはどこにあるんだろうと考える。
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