僕と家族と逃げ込み家
 ◇◇◇ ◇◇◇

「お前たちダレてるなぁ」
「先生だって」

ランチ後の昼下がり、クーラーの利いた店で心地いい音楽を聴きながらの読書、眠くなるのも当然だ。

「二胡、お昼寝する」

目をゴシゴシする二胡を見て、幸助が「一緒に寝よう」とテーブルに上半身を倒す。

「ほら、腕貸してやる」

ゲッ! お前、それ知っていてやっているのか!
二胡が幸助の腕の上に頭を置き、二人はニコニコ笑い合っている。

それは婦女子がキュン死する腕枕だぞ。
僕でさえ未経験なのに……。

「僕も寝ようっと」

その傍らで健太も昼寝体制を取る。
「おい、春太」とデッドスペースを覗いた叔父がクッと笑う。

「こりゃあ、ソファベッドでも置いてやらなきゃな」
「何? 何か用?」
「亮は寝ないのか?」

僕の問いに答えず、叔父は亮に話し掛ける。

「うん……眠くない」

そうは言うものの……よく見ると目の下にはクマはあるし、顔色も悪い。

「亮、お前、眠れているのか?」

小学五年生で不眠症……?
すると、亮の瞳からポロポロ涙が零れだす。

アッと思い、叔父に目配せする。叔父は大きく頷き、「ちょっと来い」と他の皆に悟られないよう、デッドスペースから亮を連れ出す。
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