桜の季節、またふたりで
「お時間です、楽しんでください」


スタッフさんが声をかけてくれた。


「さて、行くか」


カズは、真剣な顔になってる。


「うん、よろしくね、お兄ちゃん」


カズの左腕に、真っ白なグローブをはめた右腕をかけた。


会場の扉が開き、参列者みんなに一礼して、顔をあげた。


視線の先には、シルバーのタキシードを着た竣くんが待ってる。


お互いの衣装はもちろん試着して決めたから、見てはいるんだけど、本番の会場で見ると雰囲気が全然違う。


竣くん、カッコよすぎるよ。


ボーッとしてる私にカズは、


「美春、五十嵐さんにみとれすぎ」


小声でささやいた。


まどかも美海ちゃんも啓太くんも、久しぶりに会う大学の同級生もいる。


竣くんがお世話になった整備工場の社長さんも従業員さんも、今の職場の同僚の人たちもいる。


そして、この前初めて食事した、竣くんの弟一家も。


みんなに祝福されながら、一歩一歩、竣くんへと歩み寄ってゆく。


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