俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
脇に停めてある高級そうな車を横目に、
アリサ家と俺の家を挟むアスファルトを行ったり来たり。
完全に不審者と化している俺。
いったん家に入ってあいつの携帯鳴らしてみるか?
と、思ったが。
「いやっ!」
ドンッ! とアリサ家の玄関ドアが震えた。
ビクッ! と俺の肩も震える。
ちょ、ちょちょ、何すかいきなり?
「やだ! やめてっ!」
……もしかして。
あいつ襲われそうになってる!?
――だから、本気でしたいなぁって人ができた時に、『あたし……初めてなの』ってうるうるして伝える方が、絶対相手のことドキドキさせられそうじゃない?
中3の頃、得意げにそう言い切ったアリサを思い出した。
あの時、きれいな黒い髪をなびかせてた彼女は、
凛々しくて、可愛いと思った。
正直、ドキッとした。
きっと、今の状況はこれとは違う、と思う。
わしゃわしゃと自分の髪の毛をかきまぜる。
くそ。なぜ自分の中でよく分からない感情がウゴゴゴゴとうずいているんだ?
あいつの恋愛事情は俺には一切関係ない。
関係ない、はずなのに――
うわっ、こらっ、勝手に動くな俺の足!!
タタタッ、と俺の足は自然にアリサ家のドアへと向かっていた。
そして。
うわっ、こらっ、勝手に動くな俺の指ぃぃ!!
俺はあるボタンを連打していた。
――ピンポーンピンポーンピンポーン。
アリサの家の中に、上品なトーンのインターホン音を響かせた。