俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
くそぅ、俺は何をしているんだ!? と戸惑いつつも、必死になって頭を回転させる。
中の話し声はぴたりと止んでいた。
「……あの、どちら様ですか?」
扉は開けられないまま。
アリサの弱々しい声が俺に向けられた。
「俺だけど。あのさ、飯まだー?」
「あ。良ちゃん……?」
戸惑った様子のアリサの声と、「誰?」という彼氏の小声がドア越しに聞こえた。
俺はとっさにストーリーを組み立て、こう伝えた。
「あれぇ? 誰かいんの? お前まさか忘れてないよね、近所の友達の誕生日パーティーのこと。お前が料理持ってくれば始められるんだけど」
俺ってマジですごくなーい?
近所の仲間の誕生日パーティーという設定・シナリオを瞬時に思いつくとは。
これにより、
・アリサは夜ご飯を作ってある。
・今から用事がある。
という2つの矛盾点を解決できたはず。
彼氏も大人しく帰ってくれるはず。
「なー飯できてる? もし容器足りなかったら俺タッパー持ってくるけど?」
「ううん。大丈夫。あと5分くらいで行くってみんなに伝えてくれる?」
「わかった。じゃー俺先行って待ってるわ」
そう言い残し、俺は自分の家へと戻った。