俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
俺はぷいっと顔をそむけ、
「別に。ただのバイトの先輩」
とだけ答えておいた。
さっき危なくホテルに連れ込まれるとこだったけどなっ。
「お前こそ今日彼氏来てるんだったら、そいつに自慢の料理披露すれば良かったのに」
「いいの。近くまで来たから会いたいって言われただけで、特に約束してないし。早く帰ってほしかったし」
「うわ、冷たっ。……うまくいってねーの? 彼氏と」
テレビでは映像がめまぐるしく動いているが、内容が全然頭に入ってこない。
アリサはチョコパイを一口食べ、唇に残ったクリームを舌でなぞりとってから。
こくりとうなずいた。
「うん。あたしが彼氏への熱、めちゃくちゃ冷めてる」
「じゃあ別れればいいじゃん」
「そんな簡単な話じゃないよ。まあ良ちゃんには分かんないか。彼女いたことないもんねー」
上から目線+バカにした声を向けられた。ムカッ。
俺もチョコパイをパクリと口にする。
チョコとクリームの甘さが口の中にとろけていく。
コーヒーをすすり、苦みで甘みをかき消した。
「うるせーな。さっき襲われそうになってたくせに」
「え……」
「外までお前らの声、丸聞こえだったから」
「…………」
「何でお前の意志を無視するようなヤツと付き合い続けるの? 無理やりとかありえないっしょ」