俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
気がつくと、カーテンの隙間から光が漏れていた。
さっきのは単なる夢だったらしい。
よろよろと1階に降り、和室の仏壇の前に座った。
黒縁に囲まれた親父は、引き締まった表情をしていた。
口角は軽く上がっているが、
いつでも変わらずに鋭い視線を俺に向けてくる。
母も祖母も、それぞれ気持ちに折り合いをつけながら、親父がいない生活を歩み続けている。
時々寂しさや悲しさを見せながらも、前向きに生きようとしている。
親父から家族を託されたはずなのに、俺は……。
「本当、情けねーな……」
親父は生きている間、ずっと俺の前に立ちふさがる壁だった。
突然、死んでしまったことはもちろん、
最後の最後にようやく褒められたことも、ずっと俺の心に影を落としていた。
本当は親父に認められていた、らしい。
どんどん高くなる壁を登りきれるよう、ずっともがき苦しんでいたのに。
その壁自体が実はまやかしだった。
裏切られたような気持ちにさえなってしまった。
ただ、もっと向き合っておけばよかった。
親父の本心をもっと早くに知っておけばよかった。
なぜ俺は気が付くことができなかった?
なぜ本気でぶつかることから逃げてきた?
たくさんの後悔が押し寄せてくる。
でももう遅い。
死んだら全部終わりだ。
「ちっ。死ぬの、はえーんだよ……クソ親父!」
チィィーーーン! とりんを強くたたき、手を合わせる。
自分への怒り、親父への怒りが次々とこみあげたものの。
閉じたままの目の奥がぎゅっと熱くなった。
残響音がふっと消え、目を開けた、
その時――
キキッ、と自転車が止まる音が外から聞こえてきた。
急いでスニーカーのかかとを潰して、外へ出た。