俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
とりあえず「彼氏とはどうなったの?」と尋ねてみた。
彼女はその場を動こうとしないため、玄関のタイルの上に立ったまま。
「一晩中話し合って、やっと別れることできた」
「そっか」
「もう気持ちが冷めたって言っても、別れたくないとか愛してるとか言うんだよ。本当意味わかんない」
「はぁー(意味わかんないのはお前もだけどなっ)」
「でも、最後はキレられて……お前なんか恋に恋してるだけ、とか、だから高校生なんかガキすぎて嫌なんだ、とか」
「…………」
「頭からっぽとか、お前のいいところは見た目だけだ、とか。一緒にいても面白くなかったとか。かわいいJKとやりたかっただけ、とか」
華奢なパンプスのつま先を、タイルの浅い溝にはわせている。
下を向いているため、その表情はよく見えない。
「あたしにはないんだよ、自分が。どうせ見てくれないんだよ、あたしの中身。どうせ何もないんだから。見た目だけじゃんあたしなんか」
「…………」
「しょせん、あたしなんてそんなもんなんだよ。かわいい以外に価値なんてないんだよ。
……あはは。やば、いろいろ通り越して笑っちゃうよ」
俺から視線をそらし、アリサは悲しそうに笑い出す。
高めの天井、つるつるの廊下、きれいな壁紙。
そこらにぶつかり合う彼女の笑い声を聞いていると、次第にイライラがつのってきた。
彼氏の発言にはもちろん、今の彼女の様子に対しても。
「なぁ。何笑ってんだよ」