俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「……え?」
「見た目だけなわけねーじゃん」
「ううん。どうせからっぽなんだよあたしなんか。半年付き合ったのにこんな言われようって。笑うことしかできないよ。
そうだ、朝ごはん作ろっか? まだ食べてないよね?」
にせものの笑顔を浮かべて、彼女はパンプスをぬごうとした。
――違う。お前はそんなんじゃねーよ。
お前にはかなわないと心のどこかで思っている。
いつも上から目線で俺をからかって、楽しんで。
年上なんて思ったことはないけど、俺の先をいつも行っていて。
でも、時々気持ちがブレて。
かと思えば、意味の分からない理由で立ち直って。また俺の想像を超えてくる。
お前は、そういう存在だろうが。
「ちげーじゃん。お前。人のこと鈍感っつっといて、分かってねーのはお前の方じゃん」
アリサの動きがぴたりと止まった。
今の彼女は心が傷ついているはず。
もっと優しい口調で言うべきだろうけど、無理だった。
「どんだけ一緒にいると思ってんだよ。お前はからっぽじゃねーよ」
玄関に響いた自分の声が、震えていた。