俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
雑念を追い払いかけた俺だったが。
アリサは逃してくれなかった。
「ねぇ、今、胸のあたり見たでしょ? ヘンターイ」
「見てねーよ」
「時々、しれっと見てくるよね。あたし知ってるよ?」
「…………」
右後ろから、左後ろから、交互に俺の視線を追いかけてくるアリサ。
どうして上からのぞきこんでくるんだ。下着見えるわ!
「そういう服着てるのが悪いんじゃん」
「やっぱり良ちゃんも男の子なんだね。あははっ」
ファッサーと髪の毛に空気を含ませながら、アリサは笑った。
う、甘い香り成分(カプセル状みたいなやつ)が飛んでくる……。
いいや。惑わされるな俺。冷静になれ。
確かにアリサは可愛い。色気もそれなりにある。プリンセスオブ女子って感じがする。
でもさぁ、だからってさぁ。
うぬぼれるな! 調子に乗るな!
俺をその他の男子と一緒にするなぁ!
と、ぶっちゃけられない俺は、
よく分からない言い訳を口にしていた。
「……ほら、修学旅行で新幹線に乗ったんだけど、静岡あたりで見えるじゃん、富士山が。窓から。んで、富士山すげーって歓声あげながらみんな見るじゃん」
「あ、うん。あたしの修学旅行の時もそんな感じだったよ」
「それと同じ現象。お前の胸に目いっちゃうの」
「……え? よくわかんない。富士山は2つじゃないじゃん。1つじゃん」
ああ、会話がかみ合ってない……。
まあその通りですけど。