今夜、愛してると囁いて。
「香澄、酒弱いのに日本酒なんて飲むから……」
「うるひゃ、い……」
ろれつの回らない舌で言い返して、あたしを背負う背中にぽかりと拳を入れた。
結論から言うと、あたしは潰れた。
空きっ腹に日本酒はお酒の強い人でもまずいだろう。それでもあたしは全部忘れたくて飲んだ。
結果的に、意識はしっかりあるのに身体だけが言うことを聞かないという最悪な酔い方をしたわけだけど。
「てか、引っ越してなかったんだな」
健人と別れてから、新しい職場から近いし引っ越すのも面倒だという理由からずっと同棲していた時のままだ。
「んー……」
そんなことを説明するのも億劫で適当に返事をすると、階段を上りきってあたしの部屋のある階に足を踏み入れて、健人は立ち止まったようだった。