甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
黙って目を伏せたユアンはなぜかおちこんだように見えた。
気まずい沈黙があり、しばらくののち、少し低くなった声でユアンが
問う。
「やっぱりミルズ男爵夫人になるのは嫌だった?」
「嫌っていうか、嘘をつきたくないだけよ」
「嘘......ね」
そう嘘をつくのは嫌だ。
そして今はそれと同じくらい、ユアンに、もう嘘をついてほしくない
と思う。
嘘をつかないでなんて言っても、ユアンはふんと鼻先で笑うだけだろうか
でも_ _
迷いながらもフィーネが口をひらきかけた時、コンコンと部屋のドアがノック
され、客室係の声がした。
「先ほどお客様が戻っていらして、面会を希望されています」
ゴードン氏が戻ってきたらしい。
ユアンが "わかった” と返事をすると思い、口元まで出かかっていた言葉を
飲みこんだフィーネは、おもむろに抱き寄せられて目を見張った。
「男爵は今、夫人と取り込み中だから逢えないと伝えてくれ」
「......はい」
ドアの向こうで少々戸惑ったような返事があり、客室係が立ち去る足音がする。
それを聞きながら、フィーネが ”よかったの?”とユアンに問いかければ
「どういうつもりで戻ってきたのかわからないが、逢えなければ
彼は明日、契約書をもってくるより他、しょうがないからね」
とあっさりとした口調でユアンは言い、フィーネを見つめたまま、にやりと
口角をあげた。