甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「エリザさんが花が好きって言ってみえたから、今日は植物図鑑
をもってきたの。それに、こんな本もどうかと思って、
ここペンリスに伝わる昔話を集めたものなのよ」
ベッド脇に置いた椅子に腰掛けたイリーナが数冊の本を差し出す。
「いつもありがとうございます」
ベッドの上で上半身をおこし、クッションにもたれているフィーネは
本をうけとると頭を下げた。
「そんな他人行儀なかたい挨拶はやめてね。エリザさんはいつか
故郷へ帰られるから、ずっと友達ってわけにはいかないかも
しれないけど、ここにいる間は、気心のしれた友達として
接してほしいと思っているんですもの」
ペンリスの町の噴水広場で出会って以来、イリーナは週に二回ほど
本を持って狩猟館を訪れるようになっていた。
フィーネはいつもベッドでイリーナをむかえる。
エリザは病弱な女の子だから。
寝間着を隠すように肩にかけたショールからそっと手を出し、ずれた
眼鏡をくいっとあげ、エリザになっているフィーネはイリーナを盗み見た。
けっして派手な装いをしているわけではないが、イリーナには、はっと
目を引く美しさがある。
藤色のドレスがとても良く似合っていて、柔らかな冬の日差しが、
一層、イリーナの表情を優しげに見せていた。
たとえフィーネが美しく装っていたとしても、イリーナの前では
見劣りするだろうけれど、美しいイリーナの前で、さえない眼鏡をかけ
寝間着にショール姿でいる自分を思うと、卑屈な気持ちになる。
自然と肩がおち背中を丸めたフィーネが、恥じるように胸元のショールを
掻き合わせたとき、とんとんと部屋にノックの音が響いた。
ドアが開き、オルセン伯爵になっているユアンが顔をのぞかせる。