甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「誰にも内緒で持ち出してくれたの?」
「ええ、だから、あまり長い間は......」
「わかってる、これからすぐにペンリスの町の宝石商のところへ
行って、そこの技術者に図面を写しとらせるよ。図面があれば
それを元に婚約のネックレスは作れるし、本物は今日すぐにでも
返すことができる」
レナルドの言葉に、イリーナはほっとしたように身を預けた。
柔らかい身体をもう一度、レナルド......ユアンは抱きしめる。
そしてそっと、口づけを落とす。
美しくて、やさしいイリーナ。
君にふさわしいのは、こんな上辺だけの愛を囁くような男じゃない。
君は傷つくかもしれないが、聡明な君ならすぐに何が本物か気がつくだろう。
幸い君のそばには、誠実な男がいるし......とユアンは、ミトラの日に紹介
されたイリーナの幼馴染だという若い貴族の顔を思いうかべた。
最後にもう一度だけ。
そう思いながら、うっすらと開いたイリーナの唇を奪いにいく。
柔らかく、甘い唇に、少しだけ名残惜しさを感じながら、ユアンはゆっくりと
イリーナから手を離す。
そして早々に、エインズワース邸を後にした。
バタンと勢い良く玄関のドアが開く音がして、階段に座っていたフィーネは
顔をおこした。
靴音を響かせながら、レナルド=オルセン伯爵姿のユアンが、すごい勢いで
フィーネの方に歩いてくる。
階段を数段かけあがり、フィーネの前でぴたっと立ち止まったユアンは
にっといつものように、口角をあげた。