甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「アルンが、目の前の現実を受けいれればいいんだよ」

   「どういうこと?」


 問い返したフィーネに、ユアンは億劫そうにため息をついた。


   「母親は病気だ、薬を買う金も、医者にかかる金もない、
    ということに抗うなと言ってるんだ」

   「そんな......」


 母親が目の前で苦しんでいるのを、ただ黙って見てろというのだろうか

 ユアンの言葉に、殴られるアルンを助けようともせず、顔を背けていた
 マーケットの人たちの姿を思い出して、フィーネは堪らなく腹がたった。


   「そんな言い方ひどいわ。アルンは必死なの」

   「だが、金を稼ぐ方法はない」

   「それは、そうだけど......」

   「それとも君が助けるとでも? はっ、君が? なんの力もない
    くせに?」


 確かにそうだ、フィーネはお金を持ってない。

 薬屋に寄って、と言ったのは、完全にユアンのお金を当てにした言葉だった
 けど、フィーネはユアンの言葉が我慢できなかった。


   「そうよ、確かに全部ユアンの言う通りよ、でも なにかできること
    があるかもしれないって、どうしてそういう風に考えちゃ
    いけないの!」


 ユアンからの返事はなかった。

 ユアンは眉をひそめた顔でしばらくフィーネを見ていたが、広げた
 手のひらを目元に当てて俯くと、ふっと息を吐くように笑う。


   「そうだった、忘れていたよ」

 ひとしきり乾いた声で笑ったユアンは、そう呟くように言うと、
 手を下ろしながらゆっくりと顔をあげて、フィーネを見た。
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