甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
まばらだった客も、薄闇が濃闇にかわるころには、空いている席はないほど
になっていて、酔っ払いが騒ぎ立てる声で 酒場自体がわんわんと
唸っているかのようだった。
そんな中をフィーネはトレイに注文の品を乗せ、危なっかしい足取りで
歩いている。
とにかくトレーが重い、ビールのはいった大きなジョッキが四つものって
いるからだ。
その上、理性をどこかに飛ばした酔っ払いが、フィーネに声をかけてくる。
下品な冗談を聞き流し、伸びてくる手をなんとか、かわして厨房に駆け込むと
フィーネは、はーっと肩を落とした。
そんなフィーネを見て、バーバラは上機嫌だ。
「もうへたばったのかい、男に服を買ってもらい、その上まだ金が
ほしいなんて欲張るにも程があるよ。
金を稼ぐってのがどんなに大変か、思い知るこったね」
酒場の雰囲気も嫌だけど、フィーネは疲れで身体がどうにかなって
しまいそうだった。
一日、厨房の下働きをした上にこの仕事だ。
バーバラにどんなきつい言い方をされても、騙されたように働かされても
もう、フィーネは文句を言う気力すらない。
「はい、次はあそこのテーブルへ、ビール三つだよ」
ジョッキの乗った重そうなトレイを目の前にさしだされ、バーバラの言う
ほうへ目を向ければ、客の中でも特にガラの悪そうな男が三人、あびるように
酒を飲んでいるのが見えた。
有無を言わさず、トレイを持たされ厨房からおしだされる。
しかたなくフィーネは重い足をすすめた。