甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「あのとき、私が言ったのは......」
そう言いかけて戸惑う。
なんて説明する?
違法なことをするのが怖かったのもあるけれど、ミルズ男爵のなった
ユアンにやさしくされると、胸がさわぐ、そうなる自分が怖いだなんて。
黙ってしまったフィーネの頭にぽんとセオがやさしくふれた。
「あいつはさ、持って生まれたあの特別な力のせいで
母親に捨てられた」
「えっ」
「だからあいつは、人前では絶対変わらないし、力を隠して生きて
きた。
あいつが "変わる” ことに気づく奴なんていなかったしね」
「......」
「フィーネだけだよ、あいつが変わっても、わかるのは」
ゆるゆると顔をあげフィーネがセオの顔をみれば、セオはやわらかく笑う。
「もしそれほど怖くなかったなら、受入れてやってくれないか、
あいつの力を。
あの力以外は普通の人間なんだ。
それに、あいつの正体を見破れるフィーネだって異常だろ?」
言われてみればそうだ。
なぜ、フィーネだけには本当のユアンの姿がわかるのか
その理由はわからないが、その力もまた、普通ではありえないものだ。
セオの指摘にフィーネの顔に、やっと笑顔がうかぶ。
「そうよね、考えてみたら変よね」
「だろ? 」
それから二人はひとしきり声をそろえて笑った。
「ああ、それから......」
とセオが部屋を出ていきながら、フィーネをふりかえる。
「ゴードン氏がここを狙っているていう話、あれは、単なる噂だから。」
「どういうこと?」
「噂に便乗した、あいつなりの言い訳だよ。ユアンはあの工房を助ける
気でいる」
フィーネの驚いた顔にセオは満足そうに頷くと、まるでこれから力仕事でも
するかのように、ぐるぐると肩をまわしながら言った。
「さて、ユアンのやつを、連れ戻しに行くか」