夢みるHappy marriage
時々アイスを挟みながら二つのケーキをペロリと食べあげてしまった。あれ?そういえば一緒に食べると言っていた社長さんは一切手をつけていない気がする。チラっと社長さんを見ると、バチっと目が合ってすぐさま目をそらした。もしかしなくても、私がバクバク食べてるところずっと見てた?
恥ずかしくて身を縮こまらせながら謝った。
「ごめんなさい、つい美味しくて、結局一人で食べちゃった」
「いや、いいよ。美味しそうに食べてる、その顔を見てた方が楽しかったから」
……社長さんの、考えていることが本当に分からない。
会社の女の子も、こうやって食事に連れて行ってあげるのだろうか。
例えば、会社のあの受付の綺麗な女の子や、いつもうちに一緒に来る奥森さんとか。
私のこと嫌いだって言ってたのに、今じゃこんな風に甘やかされて……。
なんで、こんな私に優しくするんだろう。
この前だって、わざわざ家まで送ってくれたし。
こんな優しくしても何のメリットのない私に。
……あなたが何を考えてるのか分かりません。
頭がモヤモヤしてきて、グラスに残ったシャンパンをぐいっと飲み干した。
色々考えることがめんどくさくなって、調子に乗ってシャンパンを飲み続ける。
お酒が好きな割に、そこまで強くない私。
さっきよりも更に、クラっと酔いがまわって気持ち良い。
シャンパングラスを持って、泡の向こうに夜景を映した。
まるで暗闇にありったけの宝石を散りばめたかのようなキラッキラな夜景。
さすが、一流高級ホテル最上階のロケーションに恍惚せずにはいられない。
「……あー、きらきらの夜景にシャンパンのしゅわしゅわが綺麗。これぞ東京マジック」
舌っ足らずになった私の話し方に、心配した社長さんが私のグラスを奪おうとする。
それを私は、両手でグラスを掴んで死守。
「人生で一回あるかないかの至福の時間なの、とことん甘やかして」
「もう、しょうがないな」
ため息をついて苦笑いしながら諦めた社長さん。
「出身、山形だっけ。いつからこっちに出てきたの?」
「高校卒業してから。てかその頃のことはあまり思い出したくないんだよね」
「……なんで?」
「あまり良い思い出ないから。いじめられてたし友達もいなかったし。あそこは本当にどこまでも閉鎖的で、暮らしてると喉が詰まりそうになる。それにあそこには私の欲しいのものは何一つないし」
そう言って、夜景を見ながら昔を振り返る。あそこには、こんな景色もこんなおいしいお酒も料理もない。