レギンレイヴ -Reginleif-

ルイはヒューゴと少し話した後、城へと戻っていった。
私は明日から軍の宿舎を利用する事になったので、その準備をして就寝した。


そして翌朝…





「姫様、本当に行ってしまわれるのですか?」


軍から支給された女物の軍服を身に纏った私を眺め、ヒューゴはそう尋ねてきた。


「くどいわヒューゴ。
それに“姫様”じゃなくて、ユーリよ」


性別を偽る事が無くなった為に私は口調を女性のものへと戻した。それでも身分は明かせない故に、名はユーリのままだ。


「姫様、お考えを改めては頂けませぬか?」


私の言葉など聞いては無いのか、再び姫様と呼び、何度も話し合った内容を確認してくるヒューゴに深いため息をついた。


「ヒューゴ、私は考え直す事はしないわ。
軍に入る事は、私が士官学校に入る時から既に解っていた事でしょう?」


「姫様…」


「もし──
もし、私が戦場で命を落としてもそれも仕方がない事よ。
だけど、何もしないでこのまま生きていくのは死んだも同じ…
それならば、私は己の手が汚れようとも戦場を選ぶわ。
そして、憎き帝国を倒した曉には我が祖国フュルステンヴェルグ王国の再興を果たしてみせるわ!」


それが今の私に出来る精一杯の事だった。
本当ならば、私は婚約者であるルイの国へと保護されるべきだろうが、それでは私に出来る事は無いに等しい。
あるとするなら、私自身の存在を大義名分として、レストア皇国が帝国に宣戦する時に使うくらいだろう…
そんなのは私は嫌だった。
だから、険しい道と知っていても私は、今の選択を後悔しない。
散っていった多くの民や両親と兄たちの為にも、生き残った私がやらなければならないのだ。


そんな私の心情を察してくれたのか、ヒューゴは困ったような表情で頷いた。


「ユライア様は、父君に似て頑固ですからな…
解りました。
ユライア様がそこまで仰るならば、このヒューゲルトは何も言いません。
ですが、ユライア様、ご無理はなさらぬよう…
とはいえ、ユライア様の事ですから無理なさるのでしょうね…
とにかく、ご無事をお祈りしてます」


「ありがとうヒューゴ。
必ず無事に戻ってきます。
それと、オルフェをお願いしますね。
では、行ってきます」


愛馬であるオルフェの事をヒューゴに頼み、私は指定された軍施設へと向かった。
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