離婚、しませんか?
「自分に全く興味も関心も示してくれない相手を想い続けるってことが、どういうことか」
「……光、さん?」
「自分を好きになってほしい、振り向かせたい、自分だけのものにしたいって、自分でも持て余すような感情がどんどん膨れ上がっていって止められなくなるんだ……今のオレみたいにね」

いつも、年下だなんて思えないほど冷静で、そんな激しさを垣間見ることはなかった夫の言葉に、まるで別人を見ているような不思議な気持ちになる。

「そんな気持ちを、あいつは何年も抱えて思い詰めていたのに。なのにオレは……正直、あいつから寄せられる好意を段々と重苦しく感じるようになっていたんだ。あいつのことを可愛いとは思えても、それは異性としてじゃなかったし、どうしても妹以上には思えなかった。だから、二年前のバレンタインデーにまた告白された時、『もういい加減諦めろ。他にいいヤツを見つけろよ』って、かなり強く突っぱねたんだ」
「……実花さんは、なんて?」

そう問えば、夫の瞳が忽ち翳りを帯びてゆく。
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