シグナル
息子があの様な形で命を落としてしまった責任の一端は自分にもあると感じた安藤は、
妻の行為に対し何も言えなくなっていたが、
次第にその行為はエスカレートしていき、
安藤が知らぬ間に、
妻は多額の借金を作ってしまっていた。
毎日の様に借金の取り立てが来る様になってしまい、
悩んだ挙げ句安藤は、
友人や親戚中を駆けずり廻り、
やっとの事で返済をした。
その後一時は離婚も考えたが、
安藤自身悲しみから脱しきれておらず、
最愛の息子を亡くした妻の寂しさも分かる為、
これからも妻を支えて生きていく事にした。
この経験からも安藤は、
どうにかして武彦が町で暴れるまでに至った経緯等を探ろうとしたが、
それも失敗に終わり、
武彦は貝の様に口を閉ざしたまま一向に口を開こうとはせず、
たまに口を開けば訳の解らないことを口走るだけであった。
こうなるとさすがの安藤もお手上げ状態となっていた。