シグナル

やがて児童相談所の職員が到着し、

武彦と面会することになった。


更に死者も出ている重大事件という事から、

阿部所長自ら富士見署を訪れたのだった。


その後すぐに、

阿部所長と安藤刑事が入れ替わる形で武彦と接見した。


「こんにちは…

私は児童相談所から来た阿部と言います、

これから幾つかお話を聞かせて貰いたいんだけどいいかな?」

「……」

武彦は無言のまま俯いている。


「名前は武彦君で良いんだよね!

君は町で暴れたそうだけど、

どうしてそんな事したのかな?」

阿部の問い掛けに、

何も応えずただ黙り込む武彦だが、

暫くすると武彦の唇が微かに動いた。


何も応えようとしない武彦に、

仕方なく次の質問をしようとした阿部は、

直前で彼の唇の動きに気付き、

そっと言葉を飲み込んだ。

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