シグナル

その間美智代は、

必死に平静を取り戻そうとしていたが、

我が子が人の命を奪ってしまったという現実を、

冷静に受け止める事が出来ずにいた。


その後暫くすると、

ようやく武雄が富士見署に到着した。


「美智代!」

「あなた、どうしたの?こんな所に…」

「どうしたじゃないだろ!」

「お前が来いって言ったんじゃないか!

それよりどういう事なんだ、

武彦が事件を起こしたって…」

「あぁその事?

ごめんなさい違ったの…

武彦じゃなかったのよ…」

美智代はこの時、

我が子が起こしてしまった事件を認めたくないあまり、

そんな言葉を発してしまった。


ちょうどそこへ青木刑事がやって来た。


「ご主人いらしたんですか…

奥さんから事件の事は聞きました?」

「その事ならもう良いんです、

間違いだったそうじゃないですか?」

「え!そうなんですか?

でも先程お子さんに間違いないと…

そう言いましたよね?」

青木の確認する様な発言に対し、

何故か美智代は、

否定するような言葉を口にした。

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