一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「フンフン、フフン~っと……」


聞き覚えのある鼻歌に瞼を開け、聞こえてきた方向を見ると、口をあんぐりさせた状態で立ち尽くすお父さんと、バッチリ目が合ってしまった。……しかも南さんと抱き合ったままの状態で。


「おっ……お父……さん」

彼の手が自分の腰に回されたままの状態。


おまけにどう見てもキスしようとしていた場面を見られたかと思うと、先ほどとは違った恥ずかしさが込み上げてきてしまい、小刻みに震え出してしまう。


するとお父さんは、気まずそうに目を忙しなく泳がせ始めた。

「とっ……父さん、もう少し仕事してくるから、どうぞ続けてください」

「え、ちょっとお父さん!?」

続けてくださいって……! 父親が言うセリフ!?


「邪魔者は退散します」と言うと、お父さんは回れ右をし、逃げるように駆け足で会社へ戻っていってしまった。

最悪すぎる。お父さんに見られるとか。

彼の腕の中でがっくり項垂れてしまったけれど……。


「じゃあミャー、お言葉に甘えて続き、しようか?」

ニッコリ笑顔で言ってきた彼の胸を思いっきり押し返した。
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