一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「ミャー、この黄色い塊はいったいなに?」

「……はい?」


あれからとりあえず南さんを招き入れ、夕食を食べたいと主張する彼にお父さんと困惑しながらも、出来上がっていた夕食をテーブルに並べたわけだけど、綺麗に箸を手にした状態で、南さんは興味深々で尋ねてきた。


私とお父さんは信じられなくてふたり、顔を見合わせてしまう。

「えっと……颯馬さんは、たまご焼きをご存知ない、のでしょうか?」

恐る恐るお父さんが聞くと、南さんは目を輝かせた。

「これ、たまごなんですか?」

たまごって……そこから聞くの?

「正確にはたまごで作った、だし巻きたまごですけど」

補足するように言うと、南さんは「これがですか?」と、再度尋ねてきた。


どうやら私が思っている以上に南さんは、とんでもないお坊ちゃま暮らしを送ってきたようだ。

身分の違いをたまご焼きで思い知らされていく。
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