一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
南さんの相手はお父さんにお任せして、お盆に乗せた食器を手に立ち上がり、キッチンへと運んでいった。


どうしようかな、いつもだったらお父さんとふたり、食後に熱いお茶を飲むのは日課なんだけど、今我が家にあるのはスーパーの特売で購入した安い茶葉だけ。これを南さんに出したらちょっとまずいよね。


食器を流し台に入れながら、なにか高給な飲み物はなかったか思い出していると、いつの間にやって来たのやら、横には南さんが立っていた。


「ミャー、なにか手伝えることはないかな?」

「わっ!?」

オーバーに驚いてしまい、後ろに後退りしてしまうと、南さんはすぐに「ごめん」と謝ってきた。

「驚かせるつもりはなかったんだ。ただ、なにか手伝えることはないかと思って……」


まるで叱られた子供のようにシュンとされてしまうと、なにもしていないのに、悪いことをした気分になってしまう。


「えっとただ、洗うだけなので大丈夫ですよ。終わったらお茶を淹れるからと、お父さんに伝えてもらってもいいですか?」

そう言うと途端に彼はパッと表情を明るくさせ、「まかせて!」と自信満々で居間へと戻っていった。
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