一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
真意の読めない彼の言動に戸惑いながらも腰を下ろし、一応尋ねた。

「えっと……ものすごく安い茶葉で淹れるお茶ですが、飲みますか?」

安いを強調して聞くと、彼はすぐに頷いた。

「ミャーが淹れてくれるなら是非」

恥ずかしがる様子も見せず言う彼に、こっちが恥ずかしくなる。


なんなの? あんなこと言った私のこと、怒っていないの? それとも怒っているからこそ優しくして油断させておいて、私をどん底に突き落とすようなことをするつもりなだけ?


葛藤しながらも、三人分のお茶を淹れてそれぞれ前のテーブルに置いた。


「颯馬さんのお口に合うかはわかりませんが、食後のお茶は美味しいので、よろしかったらどうぞ」

お父さんに言われ南さんは「いただきます」と言い、ズズッと飲んだ。

茶葉に罪はないけれど、相手はきっと世界中の美味しいものを食してきたであろう南さんだ。

まずくて吐き出したりしないだろうか?


そんな心配をしてしまう私を余所に、南さんは「美味しいです」と笑顔で答えた。

その姿にお父さんとふたり、ホッとしてしまう。
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