叫べ、叫べ、大きく叫べ!
「夏澄ちゃん。ちょっと座って」
都波がお気楽な声で私をなだめながら肩をぽんと叩く。
素直に従った自分に心底驚いたのはほんの一瞬で、膝の上で組んだ自分の手に視線を落とした。
早く屋上へ。早く1人になりたい。
ふと思い出したのはあの不思議な男子で。
もしかしたら――と思った時、今まで聞いた事のない声が傍で聞こえた。
「なあ、いつまで黙ってるつもりなん?」
視線を都波に移すとそこには、あの憎たらしく思っていた眩しい笑顔がどこにもいなくて。
瞳にすら光が見られない、冷たい瞳。
明らかにいつもの都波じゃないことは確かだった。
まるで王様がそこにいるんじゃないかってくらいの大胆な姿勢。
足を組んで、頬杖をついた彼は彼らを見下すかのような視線で見ていて……
この人は本当に私の知っている都波なのか、そう思ってしまうほどガラリと雰囲気も異なって見える。
……これが彼の本性なの?
だって、この教室の空気が重い。
それに、糸口くん以外の3人はどことなく怯えてるようにも見える。
「ツルギなんか言えよ」
そう呼ばれた人は負けじと都波を見返していて、これから喧嘩でも始まってしまうんじゃないかって。
すると、ツルギって人が席から立ち上がってこちらに向かってきた。