叫べ、叫べ、大きく叫べ!
―――………
――……
―…
ポチャンと1滴が浴室に響く。
湯船に身を沈めながら、今日一日を振り返っていた。
長湯なんてほとんどしない私だけど、今日はさすがに動きたくない気持ちが勝っていて
ほとんど頭を空にしてボーッと一点を見ている。でも思い出すのはお昼の件だ。
黒い都波からいつの間にかいつも通りの彼に戻っていて安心した。
でも要件は済んだはずなのに私を解放してくれなかったのは心底ムカついて。
それに、なんか……。
バシャッと顔にお湯をかける。
こんなあっさり増えるものなのかと自分を疑う。
スクバの中で眠っているであろう私のスマホ。
その中に4人も連絡先が増えたこの事実が今しがた信じられない。
それでも心做しか気持ちがふわふわしているのは確かで。
それを鎮めるように手のひらいっぱいのお湯を顔に被った。
お風呂から上がり自室へ向かう途中、部活から帰ってきた妹とバッタリ玄関で会って「おかえり」と「ただいま」を交わした。
少し軽くなった身をベッドに沈める。
「……ふぅ」
そう一息つけば先程会った栞那を思い出して“変わってしまった”、なんて寂しくなった。
最近の栞那はよく笑わなくなってしまったように思える。
あんなに無邪気に笑っていた彼女は一体どこへいってしまったのか。
あの日を境に私との距離も遠くなってしまったから気軽に話しかけていいのか、姉なのにそう躊躇ってしまう自分が情けない。